No.147
― 選ばれたのは、リネンではなくラミーでした -
訪れるのは、湿度と熱気、文化と喧騒の交差する国。
この旅のためにお仕立てしたのは、ラミー×シルク混のジャケット。
私たちはリネンではなく、あえてこの素材をお勧めしました。
なぜラミーなのか?
ラミー(苧麻)は、日本の「上布」にも使われてきた、古来より高貴な麻。
その繊維は硬く、シャリ感があり、吸湿性・速乾性においては天然繊維の中でも最上位に位置します。
つまり―蒸し暑い土地で、身体と服のあいだに快適な距離を保ってくれる素材です。
今回お選びいただいたのは、ラミーにわずかにシルクを混紡したもの。
これにより、素材のハリがやややわらぎ、微かな艶としなやかさが生まれます。
上品で控えめな光沢は、昼のマーケットにも、夜のレストランにも、自然となじみます。
軽やかに、どこへでも。
仕立てにも、意図があります。
肩パットを排し、裏地も最小限に。
着ていないかのように軽く、でもきちんと美しい。
“リラックス”と“品格”を、両立させました。
クワイエットラグジュアリーとは、こういうことだと思うのです。
単なる贅沢さやブランド名ではなく、
「この一着が、なぜこう作られているのか」を語れる服。
多くの方にとって、麻といえばリネンかもしれません。
しかしラミーには、それとは異なる静かな美しさと、確かな機能があります。
素材を“知って”選ぶという行為そのものが、もうすでに贅沢なのだと、私たちは思います。
オーダーとは、「装う目的」から考えること。
「涼しい服」ではなく、「旅先で疲れない服」。
「軽い服」ではなく、「どんな場にも自然になじむ服」。
その違いをかたちにするのが、私たちの仕立てです。
カンパネラでは、素材を“見た目”で選ぶのではなく、
その方の時間と環境を想像しながら、一着を共に設計していきます。
クワイエットラグジュアリーとは、
かつてのラグジュアリーとは異なる、新しい服の美しさ。
それは、主張しないのに、語れる。
軽やかで、実は深い。
そんな服の在り方を、私たちはこれからも形にしていきます。