No.144
― そのラルスミアーニ、理由あり! ―
今年は珍しく、早い時期から
様々なホワイトスーツをお仕立て致しました。
バカンス用にはゼニアのスーツ
演奏会用にシルクのタキシード
大人カジュアルにデニムスーツ
そして、今回ホワイトパーティーにご提案しましたのは
ラルスミアーニのコットンスーツです。
ラグジュアリーブランドのホワイトパーティー。
そこには、ただ“白を着る”だけではなく、
“どう白を着るか”という美意識が求められます。
ホワイトのコットンスーツ
エレガントでありながら、場に馴染む軽快さ、
そして素材がもたらす自然な余裕。
そのすべてを叶えるため、
私たちは「ウール」ではなく、あえて「コットン」という選択をしました。
ここで、コットンスーツに向く、世界の名ファブリックメーカー5選をご紹介いたしましょう。
「コットン」と一言でいっても、その表情は実にさまざま。
それぞれの特徴を知ることで、
“素材から装いを考える楽しさ”
を感じていただければ幸いです。
1. Loro Piana(ロロ・ピアーナ)|イタリア
カシミアやビキューナで知られる世界最高峰の服地メーカー。
コットン素材も例外ではなく、「Cotton Wish」などに代表される滑らかな手触りと上品な光沢は、南欧的な洗練を感じさせます。
2. Solbiati(ソルビアッティ)|イタリア(ロロ・ピアーナ傘下)
元はリネン専業の名門。現在ではリネンをベースに、コットンやシルクとの混紡生地も多く展開し、素材の風合いを活かしたサマースーツ向けの生地が人気です。
カジュアルでありながら、洗練された佇まい。軽やかさの中に知性を感じる装いに向いています。
3. Brisbane Moss(ブリスベン・モス)|イギリス
堅牢なコットンドリルやツイルを得意とする老舗。
やや無骨な表情の中に、英国ワークウェアの精神を感じさせる素材感で、仕立てによって都会的にも昇華できます。
4. Scabal(スキャバル)|ベルギー/イギリス
世界の名だたるテーラーから信頼を集める正統派。
コットン素材でも、上質さ・発色・仕立て映えの三拍子がそろっており、フォーマルにも十分耐える完成度。
コレクション「Summertime」などが代表的です。
5. Larusmiani(ラルスミアーニ)|イタリア
1930年代創業。コットンの色出し、滑らかさ、光沢、すべてにおいて独自の存在感を放ちます。
スポーティでエレガント、そしてどこか“遊び”のあるニュアンスは、パーティーシーンに最適です。
今回、私たちがラルスミアーニを選んだ理由
ホワイトパーティーという**“少し浮遊感のある非日常”**の舞台に、
ラルスミアーニのホワイトコットンは最適だと考えたのは
・適度な肉厚と滑らかさにより、白でも透けにくく、立体的に仕立てられる
・光を受けたときの反射が柔らかく、艶やか
・着る人のムードをほんの少し、遊び心のある方向へ引き寄せてくれる
どこまでも“まじめな白”でなく、
“余裕のある白”
その微細なニュアンスが、今回のご要望にぴたりとはまったのです。
オーダースーツの魅力は、「色」や「形」だけでは語りきれません。
同じデザインでも、選ぶ素材によって、仕上がりの印象はまるで変わります。
素材がもたらす“空気感”こそが、装いを完成させるのです。
たとえば同じ「白のコットン」でも、
・リゾートで映える白
・知性が際立つ白
・都会に馴染む白
…というように、その“白”が語ることは、生地によってまったく異なります。
「場にふさわしい生地」を選び抜くことも、仕立て屋の仕事。
そんな想いを静かに込めて、一着をお仕立てしています。